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帯状疱疹の痛み(その3)

さて、帯状疱疹について思いつくまま書いてみましたが、今日は、痛みの治療(神経ブロック治療)について書いてみます。

皮膚科を受診されて、抗ウイルス剤を処方される時、炎症に伴う腫れや痛みをやわらげ、熱を下げるロキソニンやカロナール、疼痛治療剤(神経障害性疼痛・線維筋痛症)であるリリカ、傷ついた末梢神経を修復してしびれ、痛みなどを改善するメチコバールなどの薬も処方されることが多いです。

なぜなら、皮膚に水疱が出る前から痛みが出現するので、皮膚科を受診しているときは、大なり小なり痛みを伴っているからです。比較的軽度な帯状疱疹にかかると、このような薬を飲んでいるうちに痛みは軽減し、いつの間にか治ってしまいます。しかし、中等度から重篤な帯状疱疹にかかると、このような薬の服用では痛みが充分に治まりません。

そのうち、治るのだろうと待っていてもなかなか良くならないことが多々あります。我慢しているうちに難治性と言われる帯状疱疹後神経痛に移行したと言われ、早期の対応が悪かった場合、一生その痛みにつきまとわれることになってしまいます。外から見るとすっかり治っているように見え、自分だけにしかわからない痛みの世界は、とてもつらいと思います。痛い、痛いと言うと、周囲からは精神的なものと見られ、心療内科や神経科などを勧められることもあります。

しかし、実際は、本当に痛いのです。急性期の痛みがずっと続いていると言ってもいいかもしれません。周囲にわかってもらえない分、精神的にも心がとても痛みます。

このような帯状疱疹後神経痛にならないために、どうしたらいいか、いろいろと世界中で研究されてきました。その結論は、できるだけ早期に交感神経ブロックを行うことです。交感神経ブロックとは、ペインクリニックの領域でよく行う神経ブロック治療の一つです。一番多いのは、硬膜外ブロックや星状神経節ブロックというものです。ある特定の場所に、3~5mlの局所麻酔薬を注射すると、血流がよくなり、傷んだ神経が治りやすくなります。この注射をできるだけ早期に、できるだけ多くすることがコツです。専門医しかできない注射でもあるので、皮膚科を受診すると同時に、ペインクリニックを受診するといいでしょう。

当院に来られる患者様は平均して発症から1ヶ月程度の方が多いです。患者様曰く、神経ブロック治療については、皮膚科の先生から聞いていたが、注射は怖いし、そのうち治るのだろうと我慢していたと言われる方が多いです。一方、皮膚科の先生から何も聞いていないので全く知らなかったと言われる方もいます。

注射が怖い気持ちはわかりますが、同じ注射をするのでしたら、少しでも早いほうがよく効きます。1ヶ月以上経過してから、神経ブロック治療を始めると、激しい痛みは改善できても、10点満点で言うと、3~4くらいの痛みが残る場合が多いです。傷ついた神経は治りにくいものです。なんとか痛み0にしたいものです。ぜひ、怖がらずに受診してくださいね。

院長 松永 美佳子