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緩和ケア(その5)-在宅ホスピス-

皆さん、在宅ホスピスってご存知ですか?

これは、自宅で緩和ケアを受けることをいいます。ホスピスと言うと、癌の末期に行くところと思っている方が多いと思いますが、ホスピスとは、緩和ケアを提供する場所を意味します。

前回お話ししたように、緩和ケアは癌の末期にのみ受けるものではなく、癌と診断された時から受けると役に立つものなのです。よって、その緩和ケアを自宅でうけることを「在宅ホスピス」と言うのです。この頃は、抗がん剤も入院せずに投与することが多くなりました。多くの方が、病院に通院しながら治療を受けているわけですが、自宅で熱が出たり、倦怠感が強くなったり、食欲が低下したりと、様々な症状でお困りになることがあります。

抗がん剤を受けに病院に行っているものの、主治医と会って話ができるのは、月に1回くらい。なかなかゆっくり話ができる時間もありません。抗がん剤を受ける部屋で看護師さんに訴えても、看護師さんが治療をしてくれるわけでもありません。結局、苦しい副作用をがまんして、不安な毎日を送っているのではないでしょうか。

在宅ホスピスでは、医師や看護師が定期的に自宅を訪問して、体調管理をします。血圧や脈拍、酸素飽和度、体温など測定し、現在の身体の様々な症状に対して、緩和ケア=治療を施します。24時間体制なので、夜中や土日・祝日でも、いつでも相談できます。病状によっては、臨時で訪問を受けることもできます。

こうして、いつでも相談できる医療スタッフが傍にいると、とても安心です。このお腹の痛み・・・がまんしていていいのか病院に行ったほうがいいのか? 今から行くべきか、明日行くべきか? ちょっとしたことでもとても気になります。ご家族も同様、いえ、本人以上に心配していることが多いです。こんな時、在宅ホスピスを受けていれば、とっても安心です。いつでも相談できるんですから! 病院の主治医を捕まえるのは大変ですが、在宅ホスピスなら電話一本でいつでも診察してくれている医師や看護師が対応してくれます。

また、一日がかりで病院に行かなくても、家にいたらいいのですから、随分楽ですよね。そして、もし、病院に行く必要がある病状でしたら、在宅ホスピスのスタッフが主治医に連絡して病院を受診できる段取りをしてくれます。なんてすばらしい! 病院との距離も今までより、うんと近くなるのです。

家に医者や看護師が来るなんてうっとおしい・・・なんて思わないで、ぜひ在宅ホスピスを受けましょう。きっと心身ともに安定し、あなたらしい生活が送れるようになると思います。

院長 松永 美佳子

 

緩和ケア(その4)

「ホスピス」と言われるところは、別名「緩和ケア病棟」と言われます。「緩和ケア病棟」と認められるには、総合病院の敷地内でなければなりません。私たち千里ペインクリニックは、ホスピスと同じ緩和ケアを提供する場所を作りましたが、公的に「ホスピス=緩和ケア病棟」と認められることは不可能でした。クリニックが入院患者を持つには、有床診療所(入院患者数が19人以下の医療機関をさします。)となる必要がありましたが、どうがんばっても診療所であり、総合病院ではないので、緩和ケア病棟と認められることはありません。

世の中のホスピスでは、癌の末期の患者さんが集まってきます。そこでは、抗がん剤や免疫療法を行うことはできません。癌と告知されていなければ入院することもできません。積極的治療をすることはあきらめないとホスピスには入れません。

しかし、最期まであきらめられない患者さんは多数いらっしゃいます。多数というより、ほとんどの患者さんは、最期の最期まで、希望を持ってなんらかの治療をしたいと思っておられます。それがいいことか悪いこと(よくない結果になること)かは別として、すべてを打ちきってホスピスに入るということが不自然のような気がします。病気もいろいろ種類がありますが、同じ大腸がんでも、生き方は10人おれば10通りであり、死に方も10人おれば10通りです。なにもしたくない人がいる一方、とことん医療をしたい人もいます。

また、その中間の方も多いです。いくら、病院の主治医からあなたの治療はありません、癌の末期ですと言われても、まだまだ生きたい、がんばりたいと思っている方は多いはずです。私は、自分の人生なので、好きにできたらいいと思います。医療も看護もオーダーメイドであるべきだと思っています。

さらに、ご高齢の方は告知されていない方も多いです。知らぬが仏と言いますが、知らないほうがいいこともあります。もっと自由に最期まで生きれたらいいと思います。

私たちのクリニックに併設された「アマニカス」は、公的にホスピスと認められていませんが、大病院と同じレベルの緩和ケアを提供することができます。大病院のホスピスはいったん入院したら、退院したり、また入院したりするようなところではなく、最期が見えた時点で入院し、いったん入院したらほとんど退院することはありません。しかし、「アマニカス」の患者さんは、出たり入ったりが可能です。死ぬ直前にだけ入るのではなく、自宅で、一時的に調子が悪くなった時に、避難して入居することが可能です。そこで、治療を受け、体調がよくなれば、自宅に戻ることができます。

アマニカスに来られる方は、決して死ぬ直前ではありません。まだまだ自分らしい生活をしています。そして、アマニカスで治療や看護にあたった医師や看護師がご自宅へ訪問し、一貫して患者さんを支えます。最期は、アマニカスで帰らぬ人になることもあります。ご自宅でそうなることもあります。選択は自由です。ご本人とご家族、それを支える医療スタッフが相談して決めていきます。「アマニカス」で緩和ケアを受けながら、病院で抗がん剤を受ける方もたくさんおられます。免疫療法を受ける方も多々おられます。なにもしたくないと言われる方は、症状のコントロールだけして自然に死を迎えることもあります。

アマニカスでは、お酒も飲んでおられます。現在はコロナ禍で面会が禁止されていますが、通常でしたら、ペットが見舞に来ることもあります。なかには、一人暮らしで大事なペットを連れてくる方もおられます。病気の治療や看護も大事ですが、その人らしいことを少しでも尊重することが大事だと思っています。

病院のホスピス病棟と比べ、収入は3分の1しかありません。近隣の病院からは、なかなか病院のホスピスと同等の扱いにはしてもらえません。しかし、患者さんの中には、本当に喜んでいただいて利用していただけることが多々あります。そんな方々の声を聞くと、苦労して続けていてよかったと思います

・・・ではまた。

院長 松永 美佳子

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