ブログ

腰部脊柱管狭窄症について

今日は、脊柱管狭窄症について書いてみます。脊柱管狭窄症という言葉は、どこかで聞いたことがあると思いますがいかがでしょうか。高齢者に多い疾患ですが、40歳代からよく見られます。

この病気は、椎間板(脊柱を形づくっている椎骨と椎骨との間にある円板状の軟骨)の変性で脊髄が圧迫されることと、脊髄の周りの靭帯が肥厚し脊髄を圧迫することが重なり、脊髄の通っている脊柱管というスペースが狭くなり、脊髄が圧迫される病気です。脊髄の周囲にある血管も圧迫されるため、血流不足になります。

足に行く神経は、脊髄から分かれていますので、脊髄が圧迫されると、足に行く神経の根元が傷つき、炎症を起こしやすくなります。

炎症が起きると、臀部や下肢に痛みやしびれが出現します。また、特徴的な症状は、少し歩くと、腰や足がしびれてきたり痛くなったりして歩けなくなり、いったん休憩すると、また歩けるといった症状が出現します。このような症状を間欠跛行(かんけつはこう)と言います。

治療方法は大きく分けて3つあります。

1)投薬やリハビリで対応

ほとんどの整形外科では、痛み止めや血流をよくする薬が処方され、電気治療などのリハビリを勧められます。

2)手術で対応

狭くなっているところの骨を削って、脊柱管を広くする手術です。
最終手段となります。

3)ブロック注射で対応

ペインクリニックでは、硬膜外ブロックという注射をします。脊髄の周りには薄い膜が2枚あります。その膜と膜の間に局所麻酔薬を注入します。その結果、狭くなっているところの血流がよくなり、きれいな血液が多く流れるようになり、傷んだ神経を修復する能力が強くなります。脊柱管が狭くなっていることは変えられませんが、中で傷んでいる神経の傷を積極的に治してあげれば、痛みは治まり、また普通に生活ができる可能性は高くなります。非常に重症な狭窄症の場合は、充分な効果が得られず、手術に至らざる得ない場合もありますが、多くは、痛みは改善し、生活しやすくなります。

機械で例えれば、長年使った機械の部品が故障したようなものです。大変傷んでいる場所があれば、機械だと部品交換しますね。でも、人間だとそうはいきませんので、ブロック注射で修理することになります。新品にはなりませんが、なるべく修理をして、また大事に使ってもらい、機械が長持ちするようにします。時々、メンテナンスすると、なおいいですね。外来の診察室で、そのように説明すると、ほとんどの方はよく理解できるようです。

薬を服用しても、悪い場所に届くのはなかなかです。また、長期の服用は、胃腸や腎臓、肝臓を悪くすることがあります。しかし、ブロック注射は、少量の局所麻酔薬を使うだけなので、身体への負担は全くありません。また、一番悪いところに打つので、効果が強いです。痛みが強い間は、週1回程度治療を続け、痛みがよくなってきたら、2週間、3週間、1ヶ月に1回といった感じで治療間隔が延びていきます。症状の改善程度は、重症度や日常生活の負担により個人差がありさまざまです。注射は怖い、痛いと思っている方が多いですが、受けてみると、「えっ、もう終わったの?」と驚かれる方がほとんどです。

手術はリスクも大きく、身体への負担も大きいことを考えると、いきなり手術をするより、まず、注射で様子をみてその上で手術も考慮する方法が一番いいと思います。

腰や下肢の痛みでお困りの方は、ぜひ一度、ペインクリニックを受診してみてください。

院長 松永 美佳子

帯状疱疹の痛み(その4)

帯状疱疹の痛みについてご説明してきました。まとめると、帯状疱疹にかかったら、皮膚科を受診すると同時にペインクリニックも受診しましょうということでした。

ペインクリニックでは、痛みの投薬と同時に、神経ブロック治療を行います。交感神経ブロックというものですが、脊髄の近くまで薬を入れますが、帯状疱疹によくかかる場所があります。特に多いのが、胸やお腹です。このような時は、脊髄でも胸部と言われる脊髄の上のほうから注射をします。ここの場所はとても危険な場所で、一つ間違えると、呼吸が止まったり、血圧が下がったりします。このため、一般的には、専門医が行うペインクリニックでも、胸部硬膜外ブロックは行っていない施設もあります。しかし、このような治療をしなければ、よりよく治る可能性が少なくなります。

そこで、当院では、胸部の注射をするときは、必ず、透視装置を使って行うようにしています。360度写しだせるレントゲン装置を使って、脊髄の狭い穴を写しだし、それを見ながら正確に針を進めます。硬膜外という特別な場所にたどり着いたと思ったら、造影剤を使い、間違った場所に投与していないかどうか確認してから、本番の薬を投与しています。このような方法で硬膜外ブロックを行う施設は日本の中でもごく少数だと思います。普通は、このようなレントゲンを見ずに医師のカンで薬を投与しますが、充分慣れた経験豊富な専門医でないと、とても怖い注射です。私は、開業して15年ですが、非常に多くの注射をしてきました。それでも、1回1回緊張して注意を集中して行います。しかも、このレントゲン装置で確認しながらしないと不安です。したくありません。

このような話を聞くと、やはり注射はやめとこうと思われると思いますが、ぜひ受けてください。私も嫌がる方にしたくはありませんが、やはり痛みが残ったときのことを考えると、がんばって受けてほしいと説得します。その他の場所に帯状疱疹ができても、それぞれ適した注射の方法があります。

院長 松永 美佳子

帯状疱疹の痛み(その3)

さて、帯状疱疹について思いつくまま書いてみましたが、今日は、痛みの治療(神経ブロック治療)について書いてみます。

皮膚科を受診されて、抗ウイルス剤を処方される時、炎症に伴う腫れや痛みをやわらげ、熱を下げるロキソニンやカロナール、疼痛治療剤(神経障害性疼痛・線維筋痛症)であるリリカ、傷ついた末梢神経を修復してしびれ、痛みなどを改善するメチコバールなどの薬も処方されることが多いです。

なぜなら、皮膚に水疱が出る前から痛みが出現するので、皮膚科を受診しているときは、大なり小なり痛みを伴っているからです。比較的軽度な帯状疱疹にかかると、このような薬を飲んでいるうちに痛みは軽減し、いつの間にか治ってしまいます。しかし、中等度から重篤な帯状疱疹にかかると、このような薬の服用では痛みが充分に治まりません。

そのうち、治るのだろうと待っていてもなかなか良くならないことが多々あります。我慢しているうちに難治性と言われる帯状疱疹後神経痛に移行したと言われ、早期の対応が悪かった場合、一生その痛みにつきまとわれることになってしまいます。外から見るとすっかり治っているように見え、自分だけにしかわからない痛みの世界は、とてもつらいと思います。痛い、痛いと言うと、周囲からは精神的なものと見られ、心療内科や神経科などを勧められることもあります。

しかし、実際は、本当に痛いのです。急性期の痛みがずっと続いていると言ってもいいかもしれません。周囲にわかってもらえない分、精神的にも心がとても痛みます。

このような帯状疱疹後神経痛にならないために、どうしたらいいか、いろいろと世界中で研究されてきました。その結論は、できるだけ早期に交感神経ブロックを行うことです。交感神経ブロックとは、ペインクリニックの領域でよく行う神経ブロック治療の一つです。一番多いのは、硬膜外ブロックや星状神経節ブロックというものです。ある特定の場所に、3~5mlの局所麻酔薬を注射すると、血流がよくなり、傷んだ神経が治りやすくなります。この注射をできるだけ早期に、できるだけ多くすることがコツです。専門医しかできない注射でもあるので、皮膚科を受診すると同時に、ペインクリニックを受診するといいでしょう。

当院に来られる患者様は平均して発症から1ヶ月程度の方が多いです。患者様曰く、神経ブロック治療については、皮膚科の先生から聞いていたが、注射は怖いし、そのうち治るのだろうと我慢していたと言われる方が多いです。一方、皮膚科の先生から何も聞いていないので全く知らなかったと言われる方もいます。

注射が怖い気持ちはわかりますが、同じ注射をするのでしたら、少しでも早いほうがよく効きます。1ヶ月以上経過してから、神経ブロック治療を始めると、激しい痛みは改善できても、10点満点で言うと、3~4くらいの痛みが残る場合が多いです。傷ついた神経は治りにくいものです。なんとか痛み0にしたいものです。ぜひ、怖がらずに受診してくださいね。

院長 松永 美佳子

帯状疱疹の痛み(その2)

宿主(あるじ)の免疫力が落ちて、活動を再開した水痘・帯状疱疹ウイルスは、長い神経に沿って、どんどん増殖を始めます。そして、その途中、皮膚にも顔を出してきたものが水疱です。神経の通り道に、長い帯状の水疱が出現するため、帯状疱疹と呼ばれます。帯状疱疹の特徴としては、水疱が皮膚に出る前に、ほとんどの方が痛みを感じることです。

原因不明の痛みに、多くの患者さんがあちこちの病院や診療科を回っているうちに、皮膚に出た水疱に気づいて「帯状疱疹だったのか」ということになるのです。この時点で、いずれの診療科で診察を受けても、抗ウイルス剤というウイルスを殺す薬を処方されます。この薬を1週間ほど服用することで、ほとんどのウイルスが死んで、それ以上広がらなくなります。この薬がなかった時代は、どんどんウイルスが広がって重症になっていました。現在、昔ほど重症化しなくなったのは、新たな抗ウイルス薬が開発され、それを早く投与されるからです。

抗ウイルス薬投与後、ウイルスは徐々に鎮静化され、1ヶ月もすると皮膚は治ったようになってきます。しかし、困ったことに痛みがなかなか取れないということがおきます。

一般的に、怪我をした時に、傷が治らないうちは痛みも伴いますが、傷が治ってくると痛みもおさまってくるのが普通です。我慢強い日本人は、もう少ししたら治るかも・・・と待っていますが、なかなかよくなりません。そうです、待っていても治らないのです。待っていればいるほど、神経の傷は古くなり、治らなくなるのです。

神経に傷がついて、変性すると、様々な誤作動が生じます。軽く触っただけでも「痛い」という間違った情報を頭に送ります。また、やけどのような痛みや刺すような痛み、ぎゅ~とねじられる様な痛みなど、様々な痛みが勝手におきます。

痛みの教科書には、慢性化した帯状疱疹の痛みを「帯状疱疹後神経痛」と名付け、治らない難治性疼痛と位置付けています。発症から3~6か月程度経過すると、帯状疱疹後神経痛に移行します。まだか、まだかと良くなるのをじっと待っていると、あっという間に3か月が過ぎ、治らない領域に突入していくのです。そうならない前に重要になるのが、神経の治療である神経ブロック治療なのです。

・・・次回は、神経ブロック治療についてご説明します。

院長 松永 美佳子

帯状疱疹の痛み(その1)

帯状疱疹(たいじょうほうしん)の患者様がよく来院されます。帯状疱疹はお年寄りがかかる病気と思われがちですが、意外にも50代、60代の方も多く来られます。中には30代の方もおられます。

帯状疱疹にかかると、多くの方は皮膚科を受診されます。皮膚に現われた帯状疱疹の水疱を見ると、一見、皮膚の病気と思いますが、実は、帯状疱疹は神経の病気です。子供のころに感染した水疱瘡(みずぼうそう)のウイルスが、長期間、脊髄から出る神経節に潜んでいて、体力が弱った時に帯状疱疹として発病します。このため、帯状疱疹を起こすウイルスを、正式には水痘・帯状疱疹(すいとう・たいじょうほうしん)ウイルスと呼びます。このウイルスは、ほんとに長年、体内で一緒に生きているんですね。驚きです。

体のどんな場所でも神経節はありますから、ウイルスはどこの神経でも発病します。診察していて、疱疹が多いと思う場所は、胸のあたり、顔の額のあたり、お腹のあたりです。帯状疱疹は、身体の奥深くの神経から発症し、神経を伝って広がっていきます。身体の神経は、右と左とちょうど2つにわかれているので、体の半分だけに広がります。不思議と反対側には広がりませんが、上下には広がります。抗ウイルス剤の服用が遅れると、上下に広がり、重症化することが多いです。帯状疱疹ウイルスは、皮膚に顔を出すだけではなく、身体の奥深くにも感染していくようです。お腹にかかると、腸の動きが悪くなり、腸閉そくになるときもあります。

ところで、どんなにひどく感染しても、約1ヶ月くらいすると、皮膚はかなりきれいになってきます。いかにも、治った感じです。しかし、痛みが続く場合が多いのです。いったいどうしてでしょうか?

・・・次回は、痛みについてご説明しようと思います。

院長 松永 美佳子

腰椎椎間板ヘルニア

腰は、5つの椎体という大きな骨と、間に挟まれたクッションである椎間板で構成されています。椎間板の外側は線維輪と呼ばれる組織で保護されていますが、重たい物を持ち上げるなど腰に強い負荷がかかったとき、線維輪が損傷を受けることがあります。線維輪が損傷を受けると、内部に存在する髄核が椎間板の外へ飛び出てしまいます。脊柱管には馬尾という神経が通っていますが、これらの神経にヘルニアが当たると、神経に傷がつき、腰や足の痛み、しびれが生じます。重いものを持つことが多い職業の方や、肥えている方などは腰への負担が大きく、ヘルニアになりやすいと言われています。

レントゲンでは、ヘルニアがあるかどうかわかりません。腰椎MRI を撮影するとよくわかります。どの場所にどの方向にどのくらいの大きさで突出しているかどうかで、痛みの場所や強さ、治りやすさが違ってきます。

一般的には、投薬を受けますが、投薬だけより、神経ブロック治療を行うと、かなり楽になります。突出した椎間板はもとの場所に引っ込みません。少し小さくなるにも数か月かかります。ずっと飛び出したままのときもあるし、きれいになくなるときもあります。やや小さくなるときもあるし、逆に大きくなってくるときもあります。痛みは神経の炎症が治まれば楽になります。ヘルニアが同じ大きさで存在していても、神経の傷がよくなれば、かなり普通に生活ができるようになります。まったく気にならなくなるときもあります。しかし、また何らかの負担が生じたときに、再発することがあります。その繰り返しで上手にお付き合いできる場合も多いです。そうしたお付き合いをするには、神経ブロック治療をしながらお付き合いするほうがいいです。神経ブロック治療は、傷んだ神経の周りの血流をよくします。そうすることで、自分で炎症を治す力が強くなります。決して、神経に麻酔をかけるわけではありません。神経を根本的に治療する方法です。

痛み止めを何種類も長期間服用することは副作用が心配です。しかし、神経ブロック治療は何度受けても薬が他の臓器に副作用をもたらすことはありません。身体にとっても、とてもやさしい治療法なんです。

ヘルニアは9割弱の方が切らずに治ると言われています。しかし、つらい時間が長引くのは生活を送る上で問題です。神経ブロック治療をしながら、少しでも痛みを軽減し、完治するまでがんばりましょう!注射がきらいな方、お気持ちはわかりますが、そんなにつらい治療法ではありません。ぜひ、一度ご相談ください。

院長 松永 美佳子

帯状疱疹の痛み

帯状疱疹はヘルペスというウイルスが神経に感染して起こる病気です。身体の表面に水疱が帯状に現れることから帯状疱疹と呼ばれます。小さいころに発症した水疱瘡のウイルスが身体の奥に潜んでいて、免疫力が低下したときに発症すると言われています。

水疱が現れる前に痛みが起こることが多いです。激しい痛みが急に起きるため、病院で検査することがありますが、そのうちに水疱が出てきて帯状疱疹と診断されます。中には、痛みがないまま水疱が現れる方や、水疱が現れないまま痛みだけが続く方もいます。

皮膚科で処方される抗ウィルス薬を服用すると、ウイルスがそれ以上増殖することはなくなります。皮膚の水疱も1か月も経つと、きれいに治ってきます。しかし、痛みが続くことが多いです。痛みもそのうち、治まるだろうと思って我慢している方が多いですが、自然には治らない痛みも多く、時間が経てば経つほど治りにくくなります。

当院のようなペインクリニックには、痛みが後遺症として残った方が多く来院されますが、とてもつらそうです。当院の経験からは、およそ2か月半経過すると、それから神経ブロック治療をしても治りにくいようです。大切なのは、できるだけ早くブロック治療を受けることです。

皮膚科に行くと同時に、ペインクリニックを受診しましょう。皮膚の治療と早期のブロック治療が完治するコツです。

院長 松永 美佳子

 

ペインクリニック

ペインクリニックは聞きなれない単語なので、知らない方もいるかもしれません。痛みの診療科と言えばいいでしょうか。様々な診療科の壁をなくして、共通する「痛み」を診断し、主に、神経ブロック治療という方法で痛みを治す診療科です。

一番多い疾患は、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症と言われる疾患です。日本人の2人に1人は腰痛持ちと言われるように、年を取ると、脊椎の変形も強くなり、腰や足が痛くなります。

整形外科では、薬や温熱療法が中心ですが、薬では治まらない痛みも多く、たくさんの薬を長期間服用するのは身体にも悪いです。

そこで、有効なのが神経ブロック治療です。注射の中身は、局所麻酔薬のみ。身体への蓄積もなく、胃腸障害や腎機能、肝機能障害を引き起こすこともありません。注射をすることで、血流がよくなり、自分で神経の炎症を治す力が強くなります。ヘルニアや狭窄症があっても、神経の傷が治れば痛みは軽減します。機械で言うなら、古くなって傷んでいるところに油を刺すようなものですね。新品にはならないし、機械のように部品交換はできませんが、修理しながら上手に使っていかないと、長い人生の最後まで持ちません。長生きしても寝たきりになったら決して幸せとは言えませんよね。

この頃、40代の若い方も腰椎や頸椎の痛みで来院される方が多いです。ストレス社会ですから、身体のあちらこちらに負担がかかっているのでしょうね。

痛みがあるあなた、ぜひ一度相談に来てください。

院長 松永美佳子