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仙腸関節痛について

3回ほど腰痛の主な原因について述べましたが、もう一つ、ぎっくり腰の原因になる疾患について述べるのを忘れていました。仙腸関節痛です。

人間には、骨盤という骨がありますが、仙骨と腸骨、恥骨から成り立ちます。そのうち、腸骨と仙骨が重なり合っているところが、仙腸関節です。左右に一つずつあります。手のひら大の大きな関節です。周囲の靭帯により強固に連結されています。年を取るにつれ、身体が硬くなり、身体の椎間関節や仙腸関節がさびるような状態になると、慢性の腰痛に発展したり、急性腰痛の原因となります。いわゆるぎっくり腰です。特徴は、腰の下のほうが痛みます。臀部に近いため、坐骨神経痛と間違われることもあります。

急性の仙腸関節炎を起こすと、ちょっと動いても痛くて動けない状態になります。ところが、仙腸関節炎は、レントゲンを撮ってもはっきりわかりません。腰椎MRIを撮ってもわかりません。どうやって診断するかと言うと、患者様の症状と仙腸関節部の圧痛により仙腸関節炎の疑いが生じると、仙腸関節ブロックを行います。レントゲン透視下で、仙腸関節を映し出し、正確に関節内に薬を注入するのです。造影剤を使用して、正しく針が入っているかどうかを確認します。ブロック後に痛みが消失すれば、仙腸関節炎で正解となり、まったく効果がないようなら診断が間違っていたということになります。

仙腸関節ブロックは、結構難しいブロックです。高性能レントゲン装置やエコーで行っていますが、レントゲンの透視下で行うほうが造影剤によって確認ができるため、エコーより正確だと思われます。関節が大きいため、十分薬液が広がらないことも多く、変形が強い関節には薬液が入りにくいです。慢性的に傷んでいると、ブロック後一時的に効果があっても、また再発しやすいです。機械で言うと、よく動かす場所が錆びて変形してしまったときは、部品交換をすれば、またうまく動きますが、人間の身体は部品交換ができないので、傷み方がひどければひどいほど、ブロックの効果も長続きしません。しかし、何回か繰り返しているうちに、だんだん良くなってくることが多いです。

関節が錆びないためには、ストレッチが大切です。日頃からよくストレッチをして、身体を柔らかくしておくと、関節も滑らかで、炎症も起こしにくいです。

腰の下のほうに痛みがあるときは、ぜひご相談ください。

院長 松永 美佳子

千里ペインクリニック新聞 第1号 発行のお知らせ

この度「千里ペインクリニック新聞」を発行しましたのでお知らせします。
当院からのメッセージをお届けしますので、ぜひお読み頂きますようお願い申し上げます。

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千里ペインクリニック新聞 第1号

嬉しい差し入れ♪

ブログをご覧いただきありがとうございます。
今回は事務スタッフから発信させて頂きます(^.^)

先日の午後、院長からスタッフへアップルパイの差し入れがありました!
訪問診療の後、院長が手作りされたアップルパイです。

早速、事務スタッフ、看護師さん、ヘルパーさん達と休憩室で頂きました。焼きたてのアップルパイはとても美味しくて、一日の疲れが癒されました(´∀`)

院長先生、ごちそうさまでした~!
そして・・・またお願いします(・ω<)♪

休診のお知らせ

学会出席のため、以下の日を休診とさせて頂きます。
ご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご了承下さいますようお願い申し上げます。

松永 美佳子 院長

6月17日(金)

池永 十健 医師

6月18日(土)午後
6月25日(土)14:30~

 

 

腰椎椎間関節痛の治療について

みなさんはぎっくり腰とよく言われますが、それは病名ではありません。症状を表す言葉ですね。ぎっくり腰の原因はいろいろありますが、多くはヘルニアや狭窄症による脊髄の急性炎症か、椎間関節の急性炎症です。今日は、椎間関節痛についてご説明します。

腰は5つの丸い骨が縦に並んでいますが、一つ一つの骨は、椎間関節というところで結合しています。左右一つずつあります。よって合計10個の関節があるわけです。

関節とは、肘、手首、膝、足首など、曲がるところを関節といいます。腰は、椎間関節が自由に動くために、複雑な動きができるのです。小さな関節がたくさんあって、前、後ろ、左右などに自由に動いているのです。その小さな関節の中には、髪の毛のような神経が入り込んでいて、その神経が炎症を起こすと、ぎっくり腰になるわけです。機械を長年使っていると、よく動くところは変形したり錆びたりしますよね。それと同じで、人間も長年腰を使っていると、関節に変形が生じて、すべりが悪くなります。若いときは、身体も柔らかく、自由に動きますが、年を取ると、身体は硬くなり、関節はぎしぎしした動きになりがちです。摩擦が大きくなって、関節の中の神経が傷むのもわかりますね。親指の腹くらいの大きさですが、1か所炎症が起こるだけで、痛くて身動きできなくなります。顔も洗えず、トイレに入っても、おしりも拭けない状態になります。

しかし、病院を受診しても、レントゲンを見た先生方は、異常がないと言われます。MRIを撮っても異常がないと言われます。これは、レントゲンやMRIに椎間関節の異常は映らないからです。炎症が起こっていても、神経が傷ついていても、画像では異常に映りません。整形外科では、あまり椎間関節炎という概念がなく、原因がはっきり告げられないまま、鎮痛薬を処方されます。

ペインクリニックでは、痛みの経過や症状、身体所見などから、椎間関節の炎症を疑うと、レントゲン装置を見ながら、正確に、この小さな関節の中に、局所麻酔薬と炎症止めのステロイドを注射します。もし、ここが痛みの原因であれば、かなり痛みが軽減されます。

若い人であれば、それほど関節の変形も強くないため、1回ですっかり治ることもあります。しかし、高齢になると、すでに関節は「錆びている」状態なので、1回の注射ですぐ治るということもありませんが、短くても数日はずいぶん楽だったと言われる結果が得られます。もし、ここが原因ではなかったら、まったく効果がなかったという返事が帰ってきます。つまり、ブロック注射をした結果を聞いて、診断をつけていくのです。診断と治療が一緒になっています。

ご高齢者では、すぐに治ることは難しいですが、何度も治療を続けることで、やはり痛みは軽減し生活しやすくなります。

もし、ぎっくり腰になったら、ぜひ当院を受診してください。腰の痛みはとてもつらいものです。体力も消耗します。ご高齢者では、やる気もなくなり、寝たきりになってしまいます。一日も早く痛みを軽減して、元気な生活を取り戻しましょう!

院長 松永 美佳子

腰部脊柱管狭窄症のペインクリニックでの治療法について

前回は、腰椎椎間板ヘルニアについて、ペインクリニックで行っている治療法について、整形外科との違いなど説明させていただきました。腰部脊柱管狭窄症は、ヘルニアより多い疾患です。高齢になるにつれ、脊髄という一番大事な神経の周りの組織が変形をした結果、脊髄を圧迫するようになります。脊髄の周囲の血管も圧迫され、血流不足になります。脊髄から下肢に伸びていく神経も傷がつき、坐骨神経痛が起きるようになります。少し歩くと、脊髄への血流不足から、腰や下肢に痛みやしびれが起き、血流が回復するために、いったん休憩を余儀なくされます。尺取り虫のように、歩いては止まり、歩いては止まりを繰り返すようになります。

こんな時、ペインクリニックでは、神経ブロック注射を行います。
最も得意とする分野です。ペインクリニックで行う注射は、基本的に血流をよくする注射が多いです。脊髄を包んでいる硬膜外というスペースに局所麻酔薬を注入すると交感神経ブロックが起こり、腰や下肢の血流がよくなります。血流がよくなると、神経の炎症や傷が治りやすくなります。その結果、痛みが改善するのです。

薬でも、炎症を抑えたり、痛みを感じにくくする薬がありますが、様々な副作用もあり、長期的に服用するのはお勧めではありません。
ブロック治療は何度繰り返しても安全です。肝臓や腎臓、胃腸を悪くする心配はありません。脊髄の周りの変形した組織が、元に戻ることはありません。なぜなら、人間は若返ることはできないからです。
年々古くなることはあっても、勝手に若返ることはないのです。ですが、ブロック治療によって、傷めつけられている神経を修復し、少しでもいい状態で維持することはできます。古くなった機械が故障なく長持ちするように、人間の身体も、痛みがなく長持ちすることが可能となります。

医療が発達し、高齢化社会となった日本ですが、長生きしても、腰も足も痛くて、寝たきりになっているようでは、長生きしている意味がありません。いくつになっても、自分らしく生きていくために、
早くからメンテナンスを心掛け、足腰を大切にしていきたいものです。

院長 松永 美佳子

腰椎椎間板ヘルニアに対するペインクリニックの治療法

腰椎の疾患の主たるものの一つに腰椎椎間板ヘルニアがあります。
前回のブログでは、腰痛の原因には、主に3つの疾患があることを述べました。腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、変形性腰椎症による椎間関節痛です。今日は、腰椎椎間板ヘルニアについてもう少し詳しく述べてみます。

ペインクリニックと整形外科で何が違うのか?
どちらも、診断をつけることから始まります。腰が痛い、足が痛いと言われる患者さんが来られると、お話しを聞き、診察し、レントゲン、MRIなどを撮って、その原因を調べます。腰下肢痛の原因がヘルニアであることがわかると、整形外科では投薬を始めます。牽引、温熱療法などもするでしょう。一方、ペインクリニックでは、神経ブロック治療を始めます。投薬も併用します。神経ブロック治療とは、脊髄の近くに局所麻酔薬を注射し、神経の周囲の血流をよくします。血流をよくすることで、神経の炎症を早く改善させ、強いては、神経の傷の治りを促進します。よって、痛みが早く軽減することになります。

急性期と呼ばれる発症して3か月程度の時や痛みが強いときは、毎週ブロック治療を行います。注射自体は毎日しても身体に毒はありません。しかし、保険が効かないので、週1回しか打てません。痛みがよくなれば、徐々に注射の間隔を開けていきます。痛みがよくなると、自然に動く量も多くなるので、再発しないようにフォローしていきます。ヘルニアは椎間板が突出したものですが、一度出たものは引っ込みません。出たものが、小さくなることはありますが、元のさやに戻ることはありません。ちょっとでも小さくなれば、神経から離れることになり、MRIでヘルニアがあっても、まったく痛くない状態になります。そうなるのには、早くて数か月から半年、1年くらいかかることもあります。ブロック治療をすると痛みが軽減するので、仕事に復帰しやすくなり、日常生活でも活動が増えますが、初期のうちに動きすぎると、また神経が圧迫されて傷が再発することになりますので、しばらくは6割稼働が望ましいです。

下肢に麻痺が生じたり、排尿、排便障害などが生じたときは、手術になります。また、スポーツ選手など、長期安静が保てず、一日も早く完全復帰しないといけないときは、手術が適応となります。
しかし、ヘルニアの9割弱は切らずに治ると言われており、できるだけ保存的に(切らずに)治すのがいいかと思います。なぜなら、また将来ヘルニアは同じ場所や他の場所に再発する可能性があるからです。何度も手術することは、難しくなります。その時、では、今度は切らずにお注射で治しましょうと言われても、手術した場所にブロック治療を行うことも難しくなります。ですので、なるべく切らずに保存的にブロック治療で乗り越えていくのがいいかと思います。お薬も併用します。注射でだんだん痛みが軽減すれば、薬を服用することも減っていきます。

では、次は腰部脊柱管狭窄症の治療について述べますね。

院長 松永 美佳子

腰痛

腰の病気で一番多いものは、腰椎椎間板ヘルニアと腰部脊柱管狭窄症という病気です。高齢になるほど、この患者様が増えます。腰も長年使っていると、骨や椎間板が変形し、近くの神経を傷つけます。大きく、折れ曲がっている背骨をお持ちの方もおられます。

椎間板ヘルニアは、皆さんご存知のように、骨と骨の間のクッションである椎間板が後に突出して、後ろの脊髄や足にいく神経に当たり、神経に傷を作ります。神経に炎症が起こると、神経支配領域に激しい痛みが生じます。腰から離れた膝から下や親指、足底などに痛みが生じることもあり、痛みの起こる場所は様々です。また日によって場所が移動します。また、脊柱管狭窄症は、椎間板や脊髄の周りの靭帯が肥厚し、骨の中を通っている脊髄を圧迫する病気です。

脊髄全体が圧迫されていて、周囲の血管も圧迫されているので、血流不足となります。何分か歩くと、腰や足がしびれたり痛くなって立ち止まることが多いです。これを間欠はこうと言います。歩くことで血流が不足し、ちょっと休憩して!と神経が訴えているのです。

次に多い腰痛は、腰椎椎間関節痛です。骨と骨がかみ合わさっているところを、関節と言います。腰にはたくさん関節があって、そこが動くことで複雑な動きをすることができます。年を取ると、変形を起こし、その中の髪の毛のような細い神経が炎症を起こします。いわゆるぎっくり腰はこれが多いです。若い人でも、ぐきっとなって、動けなくなる場合があります。若い人は関節もまだきれいですから、ブロック治療ですぐよくなりますが、高齢者は、関節がかなり傷んでいるので、なかなか完治は難しいです。機械で言うと、さびているようなものです。

さて、次回は治療方法についてご説明します。
今日はこれでおしまいです。

院長 松永 美佳子

 

コロナと痛み

今は旅行だったり外食だったり、仕事までも自粛しないといけない人もいて、たくさんの「我慢」が強いられる状況だと感じます。もちろん感染しない、ひろげないためですが、日本人はもともと忍耐強く、耐え抜いた先に喜びがあると信じられる力もあるから、みんな今「我慢」できるんだと思います。

でも、痛みに対しても同じように「今は我慢」していませんか。

痛みはカラダが助けを求めるサインで、痛みがあるのはカラダがうまく機能していないためです。さらに痛みは心の側面を担当する脳にも作用するので、痛みがあると気分が優れなかったりイライラしたりしてしまいます。

そして、いつかなくなるだろうと我慢してしまうと、カラダは痛みを覚えてしまい、「いつも、いつまでも痛い」状態になってしまうことがあります。そうなると治療しても痛みが消えず、一生痛みと付き合わないといけなくなります。痛みが出始めた時に治療を始めるほうが効果もはやく得られますし、長引く痛みで心が疲れてしまうこともなくなります。

コロナの影響で、運動ができなくなったり、デスクワークが続いたり、病院受診を控えたりして、痛みが増えて悩んでいる方も多いと思います。

当院ではコロナ対策をしっかり準備して、みなさんが安心して治療を受けられる環境づくりに努めています。コロナ状況のなかでも、痛みが出るときは我慢せず、いつでも相談に来てください。

医師 富野 敦稔

緩和ケア(その5)-在宅ホスピス-

皆さん、在宅ホスピスってご存知ですか?

これは、自宅で緩和ケアを受けることをいいます。ホスピスと言うと、癌の末期に行くところと思っている方が多いと思いますが、ホスピスとは、緩和ケアを提供する場所を意味します。

前回お話ししたように、緩和ケアは癌の末期にのみ受けるものではなく、癌と診断された時から受けると役に立つものなのです。よって、その緩和ケアを自宅でうけることを「在宅ホスピス」と言うのです。この頃は、抗がん剤も入院せずに投与することが多くなりました。多くの方が、病院に通院しながら治療を受けているわけですが、自宅で熱が出たり、倦怠感が強くなったり、食欲が低下したりと、様々な症状でお困りになることがあります。

抗がん剤を受けに病院に行っているものの、主治医と会って話ができるのは、月に1回くらい。なかなかゆっくり話ができる時間もありません。抗がん剤を受ける部屋で看護師さんに訴えても、看護師さんが治療をしてくれるわけでもありません。結局、苦しい副作用をがまんして、不安な毎日を送っているのではないでしょうか。

在宅ホスピスでは、医師や看護師が定期的に自宅を訪問して、体調管理をします。血圧や脈拍、酸素飽和度、体温など測定し、現在の身体の様々な症状に対して、緩和ケア=治療を施します。24時間体制なので、夜中や土日・祝日でも、いつでも相談できます。病状によっては、臨時で訪問を受けることもできます。

こうして、いつでも相談できる医療スタッフが傍にいると、とても安心です。このお腹の痛み・・・がまんしていていいのか病院に行ったほうがいいのか? 今から行くべきか、明日行くべきか? ちょっとしたことでもとても気になります。ご家族も同様、いえ、本人以上に心配していることが多いです。こんな時、在宅ホスピスを受けていれば、とっても安心です。いつでも相談できるんですから! 病院の主治医を捕まえるのは大変ですが、在宅ホスピスなら電話一本でいつでも診察してくれている医師や看護師が対応してくれます。

また、一日がかりで病院に行かなくても、家にいたらいいのですから、随分楽ですよね。そして、もし、病院に行く必要がある病状でしたら、在宅ホスピスのスタッフが主治医に連絡して病院を受診できる段取りをしてくれます。なんてすばらしい! 病院との距離も今までより、うんと近くなるのです。

家に医者や看護師が来るなんてうっとおしい・・・なんて思わないで、ぜひ在宅ホスピスを受けましょう。きっと心身ともに安定し、あなたらしい生活が送れるようになると思います。

院長 松永 美佳子